大判例

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佐賀地方裁判所 昭和28年(ワ)131号 判決

原告 高取二郎

被告 国

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告は「被告は原告に対し金四万八千百三十四円及びこれに対する昭和二十八年四月三日から右完済まで百円につき一日金四銭の割合による金員を支払うべし」との判決を求め、その請求原因として陳述した事実の要旨は、原告は昭和二十二年度に財産税法に基いて佐賀税務署に財産税申告をしたが、その内容は財産価格合計金八十二万四千四十二円、税額金四十二万六千六百二十八円であつた。ところが右申告後昭和二十二年八月七日附をもつて杵島郡武雄町農地委員会から原告に対し「同町所在の原告所有名義の農地は事実上高取ハナの所有と認められ、同人から買収対象地として解放申出があり同年七月二日附をもつて政府において買収しているので財産税物納の対象とはなり難い」旨の通知があつた。そこで原告は直ちに佐賀税務署に対し、さきに原告が提出した財産税申告には、重大な錯誤があつたこと、すなわち原告所有として申告した武雄町所在不動産は全部実質的には高取ハナの所有である事実を指摘して修正申告を申出たところ、同税務署においてはこれを諒承した。しかるに佐賀税務署長は、原告に対し同年九月一日附をもつて財産税課税価額更正決定通知書を、更に引き続き同月十五日附をもつて納期日を同年十月十五日と指定した納税告知書を、それぞれ送付したが、右書面にはいずれも原告の修正申告を無視し、当初申告のままで税額を割出してあつたので、原告は同年九月二十九日附をもつて再審査の請求をした。しかるに右請求に対してはその後何等の決定もなすことなく、原告の財産税額は金四十七万二百十二円であるとの誤つた判断の下に、遂に原告に対し滞納処分として昭和二十七年十二月二十二日に「接収住宅の解除に伴う損害補償費」を、更に続いて同月二十四日に原告所有不動産を、それぞれ差押処分に付した。そこで原告は右の事情を福岡国税庁協議団佐賀市支部に具申して、その適正な判断を依頼したところ、昭和二十八年四月二日に至り、所轄税務署長は終に原告の主張を全面的に容認して、前記更正決定による財産価額から高取ハナに属する一切の財産価額を控除し、改めて原告並に真正の同居家族二名のみの財産価格を算出し、これに対する税額を金四万八千百三十四円と決定したので、同月三日原告は一応右税額を納付した。

さてそこで租税の時効について考えるに、申告税の消滅時効は申告と同時にその進行を開始するものであるが本件の場合は前記のように昭和二十二年九月十五日附をもつて納税告知書が送付されたので、これにより時効は中断し、右告知において納期日として指定された同年十月十五日から再び時効が進行したものである。そこでその後満五年にあたる昭和二十七年十月十五日の経過と共に本件財産税は時効により消滅したものというべきである。そして昭和二十八年四月三日に本件財産税を納付したのは、前記のように滞納処分として不当に原告所有財産の差押処分をなし、これに対し原告から再三に亘り差押の解除を求めたにも拘らず、所轄税務署においてこれに応じなかつたので、右差押の解除を求めるため、やむを得ず、一応納付したものであつて、原告において時効利益を放棄したものではない。故に右納付税額は当然に原告に還付せらるべきものであると信ずるので、右金額及びこれに対する国税徴収法所定の還付加算金の支払を求めるため本訴に及ぶ。というのであり被告の抗弁に対し昭和二十七年八月十二日頃鳥栖税務署長から納税の催告があつたことは否認すると述べ、乙号各証の成立を認めた。

被告指定代理人は主文と同旨の判決を求め、答弁として原告の主張事実中昭和二十二年度に原告がその主張のように財産税申告をしたこと(但し税額は四十二万六千四百七十円である)、同年八月頃原告から武雄町所在不動産は高取ハナの所有であり、その点さきの申告に錯誤があつた旨の申出があつたこと(但しそれは修正申告ではない)原告主張日時にその主張の如き更正決定をなし、且つ納税告知書を発したこと、これに対し原告が再審査申請書を提出したこと、原告主張日時にその主張の財産差押処分をしたこと、原告が協議団に具申したこと及び金四万八千百三十四円を納付したことはいずれも認めるが、その余の事実は否認する、と述べ、抗弁として本件財産税の徴収事務については原告主張の如く昭和二十二年十月十五日を納期とする納税告知書を佐賀税務署長から原告に交付しているので消滅時効は右納期日の翌日から進行するものであるが、同徴収事務はその後鳥栖税務署に移管されたので同税務署長は昭和二十七年八月十二日原告に対し納税の催告をし、次いで同年十二月二十二日及び二十四日の両日に原告主張のとおり財産差押処分をなし不動産に対する差押処分は現在まで継続している。そこで右催告及び差押は会計法第三十一条及び民法第百五十三条により時効の中断事由となるものであり、本件においては未だ五年の消滅時効は完成していない。仮に時効完成したとしても、原告は時効完成後たる昭和二十七年十月二十四日及び昭和二十八年一月三十日の両日に鳥栖税務署長に対し納付誓約書を提出して納税義務を承認し、もつて時効利益を放棄したものである。更に原告はその主張のとおり昭和二十八年四月三日に金四万八千百三十四円を納付したものであるが、時効完成後の弁済は時効利益の放棄に外ならない。よつて右いずれの点からしても原告の本訴請求は失当であると述べた(立証省略)。

三、理  由

原告に対する財産税につき佐賀税務署長から昭和二十二年九月十五日附をもつて納税告知書を原告に交付し、右告知において納期日を同年十月十五日と指定したこと、昭和二十七年十二月二十四日に財産税四十七万二百十二円の滞納処分として原告所有不動産の差押処分がなされたこと、昭和二十八年四月三日に原告が財産税として金四万八千百三十四円を納付したことは、いずれも当事者間に争がない。しからば本件租税債権の消滅時効は前記納税告知により一旦中断し指定納期日の翌日たる昭和二十二年十月十六日から再び進行を開始したものと解すべきであるが、各成立に争のない乙第一号証の一、二に証人津江弘の証言を綜合すれば本件財産税の徴収事務はその後佐賀税務署から鳥栖税務署に移管され、同税務署長は昭和二十七年八月十二日に原告に対しその肩書住居に宛て普通郵便をもつて財産税納入催告書を発送したことが認められ、他に反対の証拠のない本件においては右催告書はその頃原告に到達したものと推断すべきである。そして右証人津江弘の証言によれば前記不動産の差押処分はその後解除せられることなく現在なお継続中であることを認めることができる。しからば本件財産税の消滅時効は右催告及びその後六ケ月内になされた不動産差押処分により中断し(会計法第三十一条民法第百五十三条)未だ時効完成しないものといわなければならない。

されば右消滅時効が完成したことを前提とする原告の本訴請求は、爾余の争点に対する判断を待つまでもなく、既に失当なることが明かであるから、これを棄却すべきものとし訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 岩永金次郎)

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